佐渡ヶ島旅行記 5
佐渡ヶ島での睡眠はロヒプノールの効果で快適なものだった。しかし、友人は眠れない夜を過ごしたらしい。
原因は、僕のいびきだ。
グーグーといびきをかく僕がiPhoneの動画に収められていた。なんだか犯罪を犯したような後ろめたい気分である。
しかし、友人は睡眠時間が短くても大丈夫なヒトだった。気にせず朝食を食べる。8時出発のバスに乗らなければならないので、朝はせわしなかった。
7時30分には旅館を出ることにした。宿泊費は2人で14,000円。1万円札2枚で支払うと、ご主人は「お釣りがないので取りにいってくる」と隣の住居へ走っていった。多分、親族の家が併設されているのだろう。
それにしても、朝の急いでいる時間に待たされるのは腹がたつ。バスは待ってくれない。イライラしながら待っていた。やがてご主人が帰ってくる。お釣りを受け取った。
バスにギリギリ間に合った。ここから約1時間北へ向かう。目的地は佐渡金山だ。バスに乗るのは10年ぶりくらいだった。酔わないか心配だったけれど、大丈夫だった。逆にバスの揺れが眠気を誘った。車内で居眠りをしながら目的地への到着を待った。
佐渡金山には特別バスに乗り換える必要があった。土日だけ運行している「金山ぐるりん 相川観光循環バス」という佐渡金山へ向かう観光周遊バスに乗る。客は僕ら2人と2、3人が乗っているだけであった。バス旅行をしているヒトはかなり少ないようだ。なんせ今日は8月15日、御盆のど真ん中なのである。
金山には2つのコースがある。僕らは2つセットになったコースに申し込んだ。まずは道遊坑(どうゆうこう)コースを巡る。
鉱山の中は、冷んやりと冷たかった。体感気温15度といったところだ。外は暑いので気持ちがいい。削り出しの洞窟が不気味なカタチをしている。鉱山に敷設されたトロッコ鉄道跡をコンクリートで埋め立てて通路にしていた。
やがて外へ一旦出て坂道を登る。すると佐渡金山のシンボルである「道遊の割戸」が見えた。
僕は迫力のある景色を写真に収めながら。「やっとここまで辿り着いた」という安堵の気持ちを抱いていた。ここからは旅行は折り返しである。最大の目的地「佐渡金山」に到着した嬉しさがあった。
そして次のコースへ向かう。
宗太夫坑(そうだゆうこう)コースは人形が各所に設置されていて、当時の鉱山発掘の様子をうかがうことができる。
友だちは人為的につくられた人形に興醒めしていた。早足でドンドン進んでいく。僕もそれに合わせて進む。
あっという間にコースは終わった。もう少し見たかったけれど仕方がない。コースが終わると併設されているお土産屋コーナーに着いた。
佐渡金山ケーキなるものを購入した。もっと買いたいけれど、手荷物になるので買えずじまいだった。
暑いので外で販売していた「金山ソフトクリーム」を買う。これは金粉をまぶしたソフトクリームで気分が高なった。
金山巡りは終わり再びバスに乗った。目的地は相川という町。佐渡ヶ島の北に位置する町だ。
「バスの移動も悪くない」と僕は感じていた。なんだか雰囲気がいい。それに、バスの運転というのはていねいで、思っていたよりもずっと揺れが少ないのである。移動料金もフリーパスで1,500円と安い。
流れ行く景色を写真に収めながら、ゆったりとした時間をすごしていた。
佐和田へ着いた。ここで昼食をとる。
僕は下調べでラーメン屋「出世街道」という、名の知れたラーメン屋を見つけていた。しかし、先日の料理がどハズレであったためにお店は友人にすべて任せることにした。
友人は僕のチョイスをかなり警戒していた。一種の恐怖症である。
結局、GoogleMAPに載っていないマイナーな喫茶店へ足を運ぶことになった。
実際のところ、僕も自分のチョイスに不安だった。喫茶店で安心した。定番のメニューさえ頼めばハズレはない。ミックスサンドを頼んだ。
美味しいミックスサンドだった。僕らは喫茶店で帰りのバスまでの時間を潰した。14時のバスに乗らなければならない。
バスの時間縛りがあるために、佐渡ヶ島では金山以外の場所へ行くことができなかった。