Sunny Sometimes Bipolar Disorder

躁鬱病(双極性障害)筆者の日々を綴ります。連絡はTwitterまで!Twitter@hattix0828

Sunny Sometimes Bipolar Disorder

佐渡ヶ島旅行記 4

旅館のお風呂は広くてリラックスできた。友人は元気を取り戻した。
僕も友人の後に続いて風呂へ入った。

ひとっ風呂浴びて、二人とも浴衣へと着替えた。旅行前から夜は飲みに行こうと計画していた。時間は夜の8時30分だ。
僕らが泊まったのは、佐渡ヶ島の小木地方である。Wikipediaをみると、旧小木町(2004年に合併されて佐渡市になった)の人口は4000人とある。こじんまりした町だ。それでも、佐渡の港町だけあって旅館と飲食店はちらほらとあった。ちょっとした旅館街になっている。

僕らは浴衣姿で電動アシスト自転車に乗り、お酒が飲めるところを探した。4つのお店が近くにあった。しかし、どこも予約で満タンであった。帰省客がいる。他のお店も閉まっていたりと、肝心のお店に入ることができない。
僕らは焦った。こうなったら旅館街を抜けて、商店街のほうへ行くしかない。一か八かの可能性にかけて商店街へ向かった。

浴衣で自転車をこぐというのは、無理があった。浴衣がどうしてもはだける。
はだけてパンツが見える。僕らは誰もいない小木の街を下半身はほとんどパンツ一丁といった格好で疾走していた。間抜けな格好にお互いツボにハマり、笑いながら走っていた。こういったなんだか気楽な気持ちがあった。
昼間も通ったメインストリートは、街灯が灯っているだけだった。さびれたスナックがある。スナックは友人も僕も乗り気ではなかった。行き慣れていない。
できれば居酒屋がよかった。
しかし、店はない。計画は頓挫する寸前だった。

ふと、脇道に目をやると看板が見えた。「丸亀屋」と書いてある。居酒屋だ。自転車を停めて中へ入る。客が1人いた。

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「こんばんは、まだやってますか?」と声をかけた。
もう閉店というふんいきだったけれど、大将はこころよく僕らを招き入れてくれた。
ちょうど1人いたお客さんと入れかわるかたちになった。
座敷に腰を下ろして瓶ビールを頼む。
つまみは頼まなかった。まずは酒を飲み、落ち着きたかった。
冷えた瓶ビールとグラスが運ばれてきた。普段はお酒を飲まない僕もこのときは乾杯した。うまいビールだった。安堵の気持ちと旅行気分がビールの味をよりおいしくひきたてた。

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大将は斜視が特徴的なヒトで、東京に住んでいたが故郷へ帰ってきてお店を開いたらしい。そういった世間話をはさみながら酒を楽しんだ。僕は3杯ほどで酔っ払った。

「10時までなら」という約束で僕らは店に入れてもらった。着いたのが9時、あっという間に時間が過ぎていく。僕らは乾杯して落ちついてから、茶豆という枝豆の仲間のような豆と、イカの一夜干しを注文した。手際よく大将はつまみを用意してくれた。

茶豆は、枝豆よりもうまみが多いという。たしかにうまい豆だった。晩御飯が悲惨な味だったので、うまいということに僕らはひどく感動していた。
そして運ばれてきたのはイカの一夜干し。食べやすく一口大に切り分けてある。火で炙ってあったので香ばしいイカの香りがした。
このイカは、めちゃくちゃ美味しかった。「佐渡の名産はイカ」という言葉が聞こえるようだった。うまみが段違いに多い。うまいイカをやっと食べることができた。

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僕らは終始賑やかな気分だった。気付けば10時を過ぎていた。
居酒屋で10時に閉店というのは早過ぎるといった感覚を感じる。しかし、ここは佐渡ヶ島の小さな港町。夜がふけるのは早かった。時間に友人も気付いたのか、酒を飲むペースを早めた。10時を少しオーバーしたけれど、頃合いのいい時間にひきあげることになった。勘定を済ませ、お礼をし、店から出た。すぐに大将はのれんをしまった。この時間になるとお客は僕達くらいなのだろう。

お酒も入って、楽しい気分で旅館へ帰ってきた。帰り際に自販機でコーラとミネラルウォーターを買いこみ、備え付けの冷蔵庫で冷やしておいた。旅行先で飲むコーラもなかなかいい。
飲みに行くという目的は達成されたので、もうすることはない。僕らは長旅の疲れを癒やすべく、早めに眠ることになった。明日はバスの都合上、6時30分に起きなければならない。

ここで僕が少し危惧していたのは、どうやって服薬をするかということだった。
寝る前に抗精神病薬を毎日欠かさず飲んでいるし、慣れない宿のために睡眠薬も飲みたかった。
友人には病気のことはナイショである。クスリを見せたくなかった。
僕が考えていたのはトイレへウエストポーチを持ちこんで飲むということだった。なぜポーチを持っていくか言及されたら「スマホを見るため」と言えばいい。浴衣にはポケットはなかった。
「ちょっとトイレ」と一言いって席を外した。幸いにも友人はテレビを見ていてこちらを見ていない。僕もなんら緊張はせずトイレの個室へ入り、クエチアピン、エビリファイフルニトラゼパムをのんだ。
部屋へ帰るときも友人の目線はこちらから反れていた。ポーチを持っていったことに気付いていないようだ。すこし安心した。あとは眠るだけだ。僕らは明かりを落とし、眠りについた。